先日、東京・上野にある国立西洋美術館など、ル・コルビュジエが設計した7ヶ国17件の建築作品について、国際記念物遺跡会議(イコモス)が世界文化遺産への登録を勧告した、とのニュースが発表され、これで今年の7月にも正式に世界文化遺産に登録される見通しとなりました。

コルビュジエの代表作・サヴォア邸(写真提供:重山建築研究室)
皆さんご承知の通り、コルビュジエは当館の設計者であるフランク・ロイド・ライトや、ミース・ファン・デル・ローエと共に「近代建築の三大巨匠」と称される建築家です。
代表作としてはサヴォア邸、ロンシャンの礼拝堂、マルセイユのユニテ・ダビタシオン (すべてフランス) などが挙げられます。
同じ「三大巨匠」ですが、コルビュジエは“合理性”と“機能性”を追求し、一方ライトは“有機的建築”を標榜して自然との調和を目指しましたので、建築の方向性はかなり異なります。
以前このブログでもご紹介しましたが、昨年にアメリカにあるライト作品10件も世界遺産に申請されています。
今回のコルビュジエ建築の世界遺産登録により、改めて近代建築が注目されることになると思いますが、これがライトの世界遺産登録にどのように影響するか気になるところです。
今回世界遺産に登録される国立西洋美術館は、コルビュジエが日本に残した唯一の作品で、1959(昭和34)年に完成し2007(平成19)年に国の重要文化財に指定されました。
ピロティと呼ばれる柱で支えられた開放的な空間や自然光を利用した建築様式など、随所にコルビュジエの特徴的な設計が施されています。

国立西洋美術館
国立西洋美術館の実施設計・監理は、コルビュジエの日本人弟子である前川國男、坂倉準三、吉阪隆正らが協力して行いました。また、開館20周年を機に建てられた国立西洋美術館の新館は前川國男が設計しています。
前川國男は、東京帝国大学を卒業後パリでコルビュジエの事務所に入所し、帰国後にレーモンド建築設計事務所に入所しました。
以前このブログ(※)でご紹介しましたが、当館を所有している淀川製鋼所は、1952(昭和27)年に建てた旧本社ビルの設計を、このレーモンド建築設計事務所に依頼しています。(建て替えて現存はしていません)
(※) 2019年5月現在、サイト内「専門家に訊く」にてお読みいただけます。

淀川製鋼所旧本社ビル
坂倉準三は、前川國男の紹介でコルビュジエの事務所に入ったそうですが、当館の南にある芦屋市民センター(1969年竣工)は坂倉建築研究所の設計で、やはりコルビュジエ建築の特徴を随所に見ることができます。
外観もさることながら、三階通路ではどこかコルビュジエ設計のロンシャン礼拝堂を彷彿とさせるような、白い壁面に作品展示用の大小さまざまな形の小窓が設置されています。

芦屋市民センター
ここで改めてヨドコウ迎賓館の外観をご覧下さい。
写真を見てもお分かりいただけるかと思いますが、前述した通り同じ近代建築三大巨匠の作品でもそのデザインは大きく違います。
是非この機会にコルビュジエ建築とライト建築をどちらも見学していただき、実際に作品の特徴を見比べてみるのも面白いのではないでしょうか。