ヨドコウ迎賓館は大正13年頃に竣工しましたが、当時では珍しいオール電化の住宅でした。
そのため、4階厨房の横に受電室と電気室があります。
通常は公開していませんので、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。
保存修理工事とは直接関係ありませんが、今回はそこに残っていた建設当初のものと思われる電気設備をご紹介いたします。
まずは受電室にあった配電盤です。
そして電気室の分電盤です。
パネル部分が綺麗だと思っていたら、なんと大理石でした。
日本製の配電盤・分電盤ができたのは明治時代のことで、最初は木の板が使われていましたが、その後昭和の中頃まで絶縁性に優れる素材として大理石がよく使われていたそうです。
大理石といえば高価なイメージがあるので、このような人目につかない場所で使われれているのは、何だかもったいない気もしますね。
当館が竣工した頃は、まだほとんどの家庭が薪で火を起こし、湯を沸かして調理していた時代です。
ところがここでは、アメリカやドイツから輸入した炊飯器や冷蔵庫、瞬間湯沸かし器などが使われ、厨房器具のほか、暖房設備や掃除機などもありました。
湯沸かし器でお湯が出るので、洗面所やお風呂の蛇口は2つあります。
では、このような電化製品の源である電力はいったいどこから?
驚くことに、ここからかなり離れた阪神電鉄と契約を結び、直接3,300ボルトの電気を引き込んでいたそうです。
その電気を受電室に引き込み、変圧器によって110ボルトに変圧して使っていたんですね。
昼夜間線(昼も夜も電気が供給される配線)と夜間線(夜だけ供給される配線)の2種を引き込むことで、どちらかが停電した場合でも直ちに切り替えられるようにしていたそうです。
今回の保存修理工事では、電気容量を拡大してエアコンの増設や、期間限定になるかもしれませんがライトアップの再開などを計画しています。
上の写真は十数年前にライトアップを行っていた時のものです。
再開にあたっては、照明をLEDに変更するとともに、照明の数や照度を調整して、もう少し落ち着いた雰囲気にする予定です。
実はこれらの線の引き込みに受電室・電気室を利用する予定で、分電盤はそのまま残しますが、配電盤は処理を検討していました。
しかし現在このような配電盤はあまり残っていないようですので、一般公開を再開する時に、館内のどこかで展示できないか検討しています。